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スクワットで膝が痛い=フォームが悪い?原因を決めつける前に確認したいポイント

「スクワットをすると膝が痛いんですけど、フォームが悪いんですか?」

トレーナーや運動指導者であれば、このような相談を受けたことがあるのではないでしょうか。

スクワットで膝が痛いと、

「膝がつま先より前に出ているから」

「ニーインしているから」

「スクワットのフォームが悪いから」

と、フォームに原因を求めたくなることがあります。

もちろん、スクワットの動作を見ることは重要です。

しかし、

「スクワットで膝が痛い=フォームが悪い」

と考えてしまうと、目の前の人から得られる重要な情報を見落としてしまう可能性があります。

この記事では、スクワットで膝痛が生じたときに、私がスポーツ現場でどのように評価し、考えているのかを、現在のエビデンスと実践をもとに整理します。


目次

スクワットで膝が痛い=フォームが悪い、とは限らない

膝痛の評価において、スクワットは有用な動作の一つです。

例えば、膝蓋大腿部周辺の痛みを特徴とするpatellofemoral pain(PFP:膝蓋大腿関節痛)では、スクワット、階段昇降、ランニングなど、膝関節を屈曲した状態で荷重する動作によって症状が誘発されることがあります。[1]

PFPのClinical Practice Guidelineでも、スクワットなどで症状が再現されるかを確認することは評価の一部として位置づけられています。[1]

しかし、

スクワットで痛みが再現されたことと、「スクワットのフォームが痛みの原因である」ことは同じではありません。

スクワットは、あくまで症状がどのような条件で再現されるかを確認する手段の一つです。

そのため私は、フォームを見る前に、まず「膝がどのような状態なのか」を確認します。


フォームを見る前に、まず膝そのものを評価する

選手から膝痛の相談を受けたとき、私はいきなりスクワットをさせるわけではありません。

まず選手が歩いている様子を見ます。

普通に歩けているのか。

痛みのために足を引きずっていないか。

歩様に明らかな変化がないか。

そのうえで、

  • いつから痛いのか
  • どのように痛くなったのか
  • どこが痛いのか
  • 腫れているのか
  • 過去にどのような怪我をしているのか
  • 日常生活に影響しているのか
  • 競技を継続できているのか

などを確認していきます。

疼痛部位や受傷機転、腫脹などから、どのような病態が考えられるのか仮説を立てていきます。

明らかな受傷機転があり、歩行にも影響している場合や、関節腫脹、ロッキング、giving way(膝がガクッと崩れる、いわゆる「膝崩れ」)など、より詳細な医学的評価が必要と考えられる所見がある場合には、フォームを修正して運動を続けることよりも、医療機関での評価を優先します。

すでに医療機関を受診している場合には、診断や治療方針を確認したうえで、リハビリテーションや運動を進めていきます。

つまり、

スクワットの見た目を評価する前に、「そもそも運動指導の範囲で対応してよい状態なのか」を考える必要があります。


「膝がつま先より前に出る=悪いフォーム」なのか?

スクワット指導では、

「膝をつま先より前に出してはいけない」

と指導されることがあります。

しかし、膝を前方へ移動させないように制限すれば、身体にかかる負荷そのものがなくなるわけではありません。

Fryらは、バーベルスクワットにおいて膝の前方移動を制限すると、膝関節のトルクは小さくなる一方で、股関節のトルクが大きくなることを報告しています。[2]

また、スクワット時の関節負荷は、膝関節角度、重量、動作方法などによって変化します。[3]

つまり、

「膝がつま先より前に出ているか」だけで、良いフォーム・悪いフォームを決めることはできません。

重要なのは、そのフォームが目の前の人にとってどのような負荷になっているのか、そして症状とどのように関係しているのかを見ることです。


ニーインがあったら修正すべき?

スクワットや片脚動作では、膝が内側へ入る、いわゆる「ニーイン」が見られることがあります。

研究では、patellofemoral painを有する人とdynamic knee valgusとの関連について検討されています。[4]

一方で、ニーインが見られたという事実だけから、

「これが膝痛の原因だ」

「このままでは怪我をする」

と判断することはできません。

動的な膝の位置には、股関節、膝関節、足関節・足部など複数の要素が関係します。

そのため、ニーインが見られた場合にも、

「ニーインしているから修正する」のではなく、「なぜこの動きになっているのか」「この動きを変えることで症状も変化するのか」を確認する

ことが重要だと考えています。

見た目のエラーを見つけることが評価ではありません。

その動きがなぜ起きているのか、そして本当に症状と関係しているのかを確認することが必要です。


「今までそのフォームで痛くなかった?」という視点

選手から、

「スクワットすると膝が痛いんですけど、フォームが悪いんですか?」

と聞かれたら、私はまずフォームを確認します。

そのうえで、

「今までそのフォームでやっていて、膝は痛くなかった?」

と聞きます。

これまで同じようにスクワットをしていて痛みがなかったのであれば、現在見えているフォームだけを痛みの原因と決めつけることはできません。

反対に、スクワットを始めた時期、フォームを変えた時期、重量やトレーニング量を変えた時期などと症状の出現が重なっているのであれば、それらが症状に関係している可能性も考えます。

つまり、現在の動作だけを見るのではなく、

「以前と比べて何が変わったのか?」

という時間軸も評価する必要があります。


痛みが出たら、さらに負荷をかけるのではなく課題を単純化する

自重スクワットですでに膝痛が再現される選手に、さらに重量を加えて確認する必要性は高くありません。

片脚スクワットなど、さらに要求度の高い課題へ進める前に、私はいったん課題を単純化します。

例えば、

  • 荷重位で痛みが出るのか
  • 非荷重位でも痛みが出るのか
  • 抵抗を減らすと症状は変化するのか
  • 膝関節運動そのものでも症状が再現されるのか

といったように、条件を変えながら確認します。

スクワットという複合的な荷重動作だけで評価するのではなく、より単純な条件へ落としていくことで、

「フォームのどこが悪いのか」ではなく、「どのような負荷・動作で症状が再現されるのか」

を整理していきます。

その結果から、症状に関係している可能性のある要素について仮説を立て、必要な介入を考えます。


「痛い=運動中止」とも限らない

一方で、スクワットで膝痛が再現されたからといって、痛みの存在だけを理由に一律に運動や競技を中止するわけでもありません。

例えば、以前から同様の症状がありながら競技を継続できている選手では、これまでの経過、現在の症状、競技動作への影響などを確認しながら、負荷を調整して運動を継続することもあります。

反対に、

明らかな受傷機転がある。

歩行が困難である。

明らかな関節腫脹がある。

ロッキングやgiving way(膝崩れ)がある。

このような場合には関節内損傷などの可能性も考え、運動指導だけで対応せず、必要に応じて医療機関での評価につなげます。

重要なのは、

「痛いか、痛くないか」だけで運動の可否を決めないことです。

受傷機転、症状、身体所見、機能、競技への影響、経時的な変化などを組み合わせて判断します。


「フォームを直す」から「仮説を確かめる」へ

ここまでを実際の現場に落とすと、私の評価は次のような流れになります。

① Evidence|エビデンスを知る

スクワットのバイオメカニクス、膝痛、外傷・障害との関連などについて、現在分かっていることを知っておく。

② Assessment|評価する

疼痛部位、腫脹、受傷機転、既往歴、歩様、競技や日常生活への影響、身体機能、スクワット動作などを確認する。

③ Interpretation|解釈する

「ニーインだから痛い」

「膝がつま先より前に出ているから痛い」

と決めつけるのではなく、

「何がこの人の症状と関係している可能性があるのか?」

という仮説を立てる。

④ Decision|介入を選ぶ

症状や評価結果に応じて、負荷を下げる、課題を単純化する、運動方法を調整する、別の運動へ変更するなど、その時点で適切と考えられる方法を選択する。

運動指導の範囲を超える可能性があれば、医療機関での評価につなげる。

⑤ Communication|説明する

選手から、

「スクワットすると膝が痛いんですけど、フォームが悪いんですか?」

と聞かれたとします。

私はまずフォームを見たうえで、

「今までそのフォームでやっていて、膝は痛くなかった?」

と確認します。

今まで同じフォームで痛くなかったのであれば、

「今見えているフォームだけが原因とは限らないと思う。ほかに何が変わったのかも含めて、もう少し見てみよう」

と説明します。

そして評価によって負荷を調整できる場合には、

「この条件では痛みが出るけど、ここまで負荷を下げると痛みが出ないので、今日はこの範囲でやってみよう」

というように、本人が理解できる形で説明します。

⑥ Reassessment|再評価する

変更後の痛みや動作を確認し、さらに運動後や翌日の反応も確認します。

その場で痛みが軽減したかだけではなく、その後に症状が増悪していないか、腫脹が出ていないか、競技や日常生活にどのような影響があったかなど、時間経過も含めて再評価します。

これは、EBP(Evidence-Based Practice)の考え方を背景に、AZ_ONEで「知識を実践へつなげる」ために整理している6つのプロセスです。

※この6段階は特定の論文で提唱された既存の評価法ではなく、AZ_ONE独自に実践の思考過程を整理したものです。

関連記事:「知識はあるのに現場で活かせない」のはなぜ?トレーナーに必要な“知識を実践に変える力”


Take Home Message

スクワットで膝が痛いからといって、すぐに「フォームが悪い」と判断する必要はありません。

膝がつま先より前に出ている。

ニーインしている。

左右で動きが違う。

これらは評価するときの情報にはなります。

しかし、それだけで痛みの原因を決めることはできません。

まず、疼痛部位、腫脹、受傷機転、既往歴、歩様、競技や日常生活への影響を確認する。

そのうえで動作を見て、必要に応じて課題を単純化し、

「どのような負荷・動作で症状が再現されるのか?」

「負荷や動作条件を変えると症状はどう変化するのか?」

を確認する。

さらに、

「今までそのフォームで痛くなかったのか?」

という時間軸も考える。

そして、

「何が悪いフォームなのか?」ではなく、「何がこの人の症状と関係している可能性があるのか?」を考える。

正しいフォームに人を当てはめるのではなく、目の前の人から得られた情報をもとに運動を調整する。

私は、それも運動指導者に必要な評価の一つだと考えています。


参考文献

  1. Willy RW, Hoglund LT, Barton CJ, et al. Patellofemoral Pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2019;49(9):CPG1-CPG95. doi:10.2519/jospt.2019.0302.
  2. Fry AC, Smith JC, Schilling BK. Effect of knee position on hip and knee torques during the barbell squat. J Strength Cond Res. 2003;17(4):629-633. doi:10.1519/1533-4287(2003)017<0629:EOKPOH>2.0.CO;2.
  3. Escamilla RF, Fleisig GS, Zheng N, et al. Effects of technique variations on knee biomechanics during the squat and leg press. Med Sci Sports Exerc. 2001;33(9):1552-1566. doi:10.1097/00005768-200109000-00020.
  4. Yalfani A, Ahmadi M, Asgarpoor A. The effect of kinetic factors of dynamic knee valgus on patellofemoral pain: A systematic review and meta-analysis. J Bodyw Mov Ther. 2024;37:246-253. doi:10.1016/j.jbmt.2023.11.001.

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この記事を書いた人

安澤 佳樹|Yoshiki Anzawa
医療・スポーツ・教育の領域で、運動と身体機能に関する実践・研究に取り組んでいます。大学病院での心臓リハビリテーションや運動指導、スポーツ現場でのコンディショニングや外傷・障害予防、専門職の教育など、領域を横断して活動しています。研究テーマは、心血管疾患に対する運動療法・身体機能、心臓リハビリテーション、スポーツ外傷・障害など。AZ_ONEでは、「エビデンスを、現場で使える知識に変換する」をテーマに、研究と実践をつなぐ情報を発信しています。

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