.png)
健康診断で血圧が高いって言われたんですけど……運動した方がいいんですよね?



そうですね。高血圧には運動が推奨されています
.png)
.png)
.png)
じゃあ、とりあえず30分くらい歩けばいいですか?



うーん。その前に、ちょっと確認したいことがあります
高血圧に運動がよい。
これは間違いではありません。
でも、「高血圧には運動がよい」ことと、「今日、この人が予定通り運動してよい」ことは別の話です。
反対に、
「血圧が高いなら怖いから運動させない」
というのも少し違います。
私が大切だと思っているのは、
「高血圧だから運動させる・させない」ではなく、この人が安全に運動するには何を確認し、どう調整すればよいかを考えること。
今回は、高血圧の方への運動指導について、ガイドラインなどのエビデンスと、私が実際の現場で考えていることを交えながら整理してみます。
この記事でわかること
・高血圧に運動が推奨される理由
・運動前に確認したいこと
・血圧が高かったときの考え方
・有酸素運動と筋トレの強度
・運動を無理なく続けるための工夫
※本記事は一般的な運動指導に関する情報提供を目的としています。高血圧の程度、合併症、治療内容などによって運動の可否や内容は異なるため、必要に応じて医師などの医療専門職へ相談してください。
高血圧と運動|そもそも高血圧の人は運動していい?
結論から言えば、高血圧だから運動してはいけないわけではありません。
日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、高血圧に対する運動療法が推奨されています。
有酸素運動だけでなく、適切なレジスタンス運動にも降圧効果が報告されています。
厚生労働省も、高血圧の改善にウォーキングなどの有酸素運動を定期的に行うことを推奨しています。
なので、



高血圧だから運動はやめておきましょう
と一律に考える必要はありません。
ただし、



運動は血圧にいいので、今日から30分歩きましょう!
これも少し早い。
「運動が推奨されている」というEvidenceを、どう目の前の人に当てはめるか。
ここからが運動指導者の仕事です。


まず「今日の血圧」を確認する



普段、家では血圧どのくらいですか?
.png)
.png)
.png)
だいたい120くらいですね



今日は165ありますね。ちょっと普段と違いますね
私が高血圧、あるいは血圧が高めの方を初めて指導するとき、まず確認するのはその日の安静時血圧です。
そして、できれば家庭血圧も確認します。
ここで意識したいのが、
「高い・低い」だけでなく、「普段と比べてどうか」
です。
例えば普段110〜120 mmHg台の人が、その日だけ160〜170 mmHgだったら、
「180未満だからOK」
ではなく、
「今日はなぜこんなに高いんだろう?」
と考えます。
血圧は、睡眠不足や心理的ストレス、体調、測定環境などによっても変動します。
そのため私は、単発の数字だけではなく、その人のベースラインとの違いを見ることを大切にしています。
薬を見れば、運動するときのヒントも見えてくる
もう一つ確認したいのが服薬状況です。



ちなみに、お薬は何か飲んでいますか?
高血圧では、ARB、ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬、β遮断薬などが病態に応じて使用されます。
また、心血管疾患などを合併している方では、抗血小板薬・抗凝固薬、スタチンなどを服用している場合もあります。
もちろん、薬だけを見て疾患を決めつけることはできません。
ただ、
「なぜこの薬を飲んでいるんだろう?」
と考えることで、既往歴や現在の治療内容を確認するきっかけになります。
また、β遮断薬のように心拍応答へ影響する薬剤では、運動強度を心拍数だけで判断するとズレる可能性があります。
JSH2025でも、この点には注意が必要とされています。
だから、
血圧を見る → 薬を見る → 既往歴や治療内容を確認する
と、情報をつなげて考えていきます。
「普段、運動していますか?」も大事な質問
そしてもう一つ。



普段は何か運動していますか?
.png)
.png)
.png)
いや、全然……
ここも重要です。
普段から運動している人と、何年もほとんど運動していない人。
同じ「ウォーキング30分」でも、身体にかかる負担は同じではありません。
ガイドラインに30分と書いてあるから、全員30分。
ではなく、
「この人はどこからなら始められるか?」
を考えます。
これは#001で紹介した、
Evidence → Assessment → Interpretation → Decision
そのものです。
じゃあ、今日の血圧が高かったら?
ここが一番悩みやすいところかもしれません。
例えば、
.png)
.png)
.png)
今日ちょっと高いですね。でも体調は普通です。運動できますよね?



一度休んで、もう一回測ってみましょう
まず、適切な条件で再測定します。
厚生労働省の資料では、血圧は5分以上安静にしてから測定することが示されています。
運動前の血圧は、安全に運動を行うための重要な確認項目です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高血圧を有する人について、診察室血圧180/110 mmHg以上(家庭血圧160/100 mmHg以上)の場合には、まず血圧をコントロールした上で運動を行うことが示されています。
また、運動当日の血圧が180/110 mmHgの場合には、運動を控えて休養することが示されています。
ただし、これらの数値だけで運動の可否を機械的に判断するものではありません。普段の血圧、症状、既往歴、治療状況、服薬内容、予定する運動の種類や強度などを含めて判断することが重要です。
もちろん、これだけで運動可否を機械的に決めるものではありません。
胸痛、動悸、めまい、ふらつき、いつもと違う強い疲労などがあれば、血圧の数字だけを見て運動を続けるべきではありません。
「普段との差」を見る
例えば、普段120 mmHg程度の人が今日は165 mmHg。
5分以上安静にして再測定しても高いまま。
そうであれば、予定していたトレーニングをそのまま行うことは避けます。
病院で判断に迷う場合には、医師に確認します。
逆に、再測定によって普段に近いところまで戻り、症状にも問題がなければ、その人の背景を確認したうえで、低強度の運動から反応を見ることがあります。
ここで重要なのは、
「今日のメニューを何としてでも消化する」ことではありません。
その日の状態に合わせて変えることも、運動処方です。
実際、どんな運動から始めればいい?
安全に運動できそうなら、いよいよ運動です。
私が使うことが多いのは、
ウォーキング、トレッドミル、自転車エルゴメータ
などです。
どれも比較的、運動強度を調整しやすいからです。
医療機関で心肺運動負荷試験(CPET)の結果があれば、それを利用して運動強度を設定できます。
でも、一般的なフィットネスクラブではCPETのデータなんてないことの方が多いですよね。
そこで使いやすいのがRPE(自覚的運動強度)です。
「ちょっと楽〜ややきつい」くらいから
JSH2025では、高血圧に対する有酸素運動として、最大酸素摂取量の40〜60%程度、BorgスケールではRPE 11〜13程度が示されています。
ざっくり言えば、
「楽である」〜「ややきつい」程度。
私も現場では、この11〜13あたりを一つの目安にしています。
.png)
.png)
.png)
今のきつさ、6〜20でいうとどれくらいですか?
.png)
.png)
.png)
12くらいです
.png)
.png)
.png)
それくらいで続けてみましょう
もちろん心拍数も使えます。
ただし、先ほどのβ遮断薬のように心拍応答へ影響する薬剤もあります。
だからこそ、
心拍数だけでなく、RPEや症状も一緒に見る。
一つの数字だけに頼らないことが大切です。
「30分」は初日のノルマじゃない
ガイドラインでは、有酸素運動を1日30分以上、週150〜300分程度行うことなどが示されています。
でも、
.png)
.png)
.png)
今まで全然運動していません



ガイドラインでは30分なので、とりあえず30分頑張りましょう
これは私ならやりません。
5分でもいい。
10分でもいい。
場合によっては、短時間の運動を何回かに分けてもいい。
特に運動習慣がなかった人なら、まず「できるところ」から始める方が現実的です。
厚生労働省も、「今よりも少しでも多く身体を動かす」ことを基本的な考え方として示しています。
ガイドラインの30分は知っておく。
でも、30分をそのまま目の前の人に押しつけない。
ここにもEvidenceを実践へ変換する作業があります。
高血圧でも筋トレしていい?
.png)
.png)
.png)
血圧が高いと筋トレはやめた方がいいんですか?



筋トレそのものがダメなわけではありません。ただ、負荷のかけ方には注意しましょう
高血圧だからレジスタンストレーニングは禁止、ではありません。
JSH2025では、適切なレジスタンス運動にも降圧効果が認められています。
動的レジスタンス運動では40〜60%1RM程度が示され、導入時にはより低い負荷から始める考え方も示されています。
自重から始めることが多い
特に運動習慣が少ない人なら、私はまず、
スクワットやカーフレイズなどの自重運動
から始めることが多いです。
RPE 11〜13程度を参考にしながら、例えば15〜20回程度、2〜3セット。
もちろん、これは「高血圧なら全員これ」という処方ではありません。
その人の年齢、体力、運動経験、身体機能、その日の状態を見ながら調整します。
そしてもう一つ。
呼吸を止めない。
高い努力度や強い息こらえを伴うレジスタンス運動では、血圧が大きく上昇することがあります。JSH2025でもValsalva maneuver(息こらえ)には注意が必要とされています。
現場で私が使う簡単な方法があります。
.png)
.png)
.png)
じゃあ、回数を声に出して数えてみましょう。1、2、3……
本人に数えてもらう。
それだけでも、呼吸を止めていないか確認しやすくなります。
こういうちょっとした工夫も、実際の運動指導では大事です。
なお、高血圧の方への筋力トレーニングについては、負荷設定や種目、呼吸などを含めて別の記事で詳しく扱う予定です。
続けてもらうために「全部やる」は捨ててもいい
ここからは少し違う話です。
どれだけ良い運動処方を作っても、
続かなければ、その効果を十分に得ることはできません。
特に今まで運動習慣がなかった人に、
「毎日30分歩いて、筋トレもしてください」
と言って、それが明日から習慣になるか。
なかなか難しいですよね。
だから私は、日常生活の中に運動を散りばめるように考えます。



家でスクワット20回×3セットやってください
ではなく、
.png)
.png)
.png)
歯磨きのあとにカーフレイズ10回ならできそうですか?
1フロアだけ階段にするのはどうですか?
そんなところからでもいいと思います。
・カーフレイズ10回
・スクワット数回
・少し多く歩く
・1フロアだけ階段を使う
・ゼロだった身体活動を、少しだけ増やす
まずはそこからです。
「やった記録」を残すのもおすすめ
実際に私が関わっている患者さんの中には、血圧手帳に自分で「運動」の欄を作って、
運動した日は○
と記録している方もいます。
特別なアプリでなくてもいいんです。
その記録があれば、次に会ったとき、



今週、3回できていますね
じゃあ、この運動は続けられそうですね
とフィードバックできます。
できたことを確認して、次の運動を考える。
運動処方→実施→再評価→調整。
地味ですが、この繰り返しが大切だと思っています。
高血圧の運動指導を6ステップで考えてみる
最後に、#001で紹介したAZ_ONE Practice Frameworkに当てはめてみましょう。
ケース
高血圧治療中。これまで運動習慣はほとんどない。
「健康のために運動を始めたい」とジムへ来た。
① Evidence|知る
高血圧には、有酸素運動や適切なレジスタンス運動が推奨されている。
② Assessment|評価する
このケースで最初に見るのは「高血圧」という診断名だけではありません。
今日の血圧はどうか。普段はどのくらいか。症状はないか。薬は何を飲んでいるか。普段どのくらい動いているか。
ここまで見て、ようやく「今日どこから始めるか」を考えられます。
③ Interpretation|解釈する
今日、安全に運動できる状態なのか。
この人にとってRPE 11〜13はどの程度なのか。
何分なら無理なく始められるのか。
集めた情報をつなげます。
④ Decision|選ぶ
例えば、ウォーキングや自転車から開始。
必要なら5〜10分程度から。
その人に合わせて種類・時間・強度を選びます。
⑤ Communication|伝える
なぜこの運動なのか。
どんな症状が出たらやめるのか。
生活のどこなら運動を入れられそうか。
本人と一緒に考えます。
⑥ Reassessment|再評価する
血圧、症状、RPE、運動の実施状況などを確認。
そして、次の運動を調整します。
こうして見ると、
「高血圧には何の運動が正解?」
という問いが、
「目の前のこの人には、今日どんな運動が適切?」
という問いに変わってきます。
「高血圧だから運動させない」でも「とりあえず30分」でもない
高血圧の方を初めて担当すると、怖さがあるかもしれません。
でも、
高血圧だから運動させない。
それだけでは、運動によって得られるメリットを届けられません。
反対に、
高血圧には運動がいいから、とりあえず30分歩く。
これも少し違います。
高血圧だから運動を避けるのでも、推奨されているから一律に30分歩いてもらうのでもありません。
「この人が今日、安全に運動するためには何を確認し、何を調整する必要があるのか」
その問いを持つことが、運動指導のスタートだと考えています。生活の中でできる運動を一緒に探す。
そして、また評価する。
一つひとつは派手ではありません。
でも私は、こうした評価と再評価の積み重ねが、高血圧の方に安全で継続可能な運動を提供するために大切だと考えています。
「高血圧には運動がいい」と知っているところから、
その知識を、目の前の人に使えるところまで。
それが、AZ_ONEで考えていきたいことです。
Take Home Message
高血圧に対する運動療法は推奨されています。
ただし、血圧・体調・症状・既往歴・服薬・運動習慣を確認し、その人に合わせて調整する必要があります。
「30分できるか」より、「今日どこから始められるか」。
5分でも、10回でも、生活の中で続けられる運動から始めることができます。
Evidenceを知り、Assessmentし、目の前の人が実践できる運動へ変換する。
それが、運動指導者に求められる役割の一つだと思います。
参考文献
- The Japanese Society of Hypertension. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension 2025 (JSH2025). Hypertension Research. JSH2025
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 厚生労働省「身体活動・運動ガイド2023」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット. 高血圧症を改善するための運動. 高血圧症を改善するための運動
- 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン








コメント
コメント一覧 (2件)
[…] […]
[…] […]