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サルコペニアはどう評価する?握力・筋肉量とAWGS 2025の診断基準をわかりやすく解説

若手臨床家

サルコペニアって、筋肉量が少なければ診断されるんですか?

そこは少し違います。AWGS 2025では、筋肉量だけではサルコペニアとは判断しません。現在は「低筋量+低筋力」が診断の中心です。

サルコペニアの評価では、筋肉量、握力、身体機能など、さまざまな指標が使われています。

2025年には、AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia:アジアサルコペニアワーキンググループ)が新しいコンセンサスを発表し、サルコペニアの考え方や診断基準が大きく整理されました。

AWGS 2025の主な変更点は、50~64歳にも診断基準が設定されたこと、診断が「低筋量+低筋力」に整理されたこと、身体機能が診断要件からアウトカムへ位置づけ直されたことです。[1]

さらに、サルコペニアを高齢期になってから見つけるだけでなく、生涯を通じてMuscle Health(マッスルヘルス:筋の健康)を維持・促進するという考え方が重視されています。

この記事では、AWGS 2025をもとに、

「サルコペニアをどう見つけ、どう評価し、実際の運動指導ではどう考えればよいのか」

を順番に整理します。


目次

サルコペニアとは?筋肉量だけの問題ではない

サルコペニアについて、

「筋肉量が少なくなった状態」

というイメージを持っている人もいるかもしれません。

しかし、AWGS 2025では筋肉量だけではサルコペニアとは判断しません。

診断の中心になるのは、

低筋量+低筋力

です。両方が認められた場合にサルコペニアと診断します。

したがって、

筋肉量が少ない=サルコペニア

でも、

握力が低い=サルコペニア

でもありません。

筋肉の「量」と「力」の両方を評価することが基本になります。

高齢者だけではなく、50~64歳にも評価が広がった

AWGS 2025の大きな変更点の一つが、50~64歳にも診断基準が設定されたことです。

これは単純に対象年齢を広げただけではありません。

AWGS 2025では、サルコペニアを高齢期になってから診断するだけでなく、中年期から生涯を通してMuscle Healthを考えていく方向へ視点が広げられています。

ただし、50歳を過ぎた人全員を機械的にサルコペニアとして評価するという意味ではありません。

その人の背景やMuscle Healthへの懸念を踏まえ、必要な人を評価につなげることが重要です。


AWGS 2025でサルコペニアの評価はどう変わった?

AWGS 2025を理解するうえで、特に押さえておきたい変更は3つあります。

1.診断が「低筋量+低筋力」に整理された

AWGS 2025では、

低筋量+低筋力

がサルコペニアの診断要件となりました。

従来の基準と比較すると、身体機能を診断要件から切り離し、筋量と筋力を中心とする、よりシンプルな診断アルゴリズムになっています。

2.身体機能は「診断」から「アウトカム」へ

歩行速度などの身体機能についても位置づけが変わりました。

AWGS 2025では、身体機能はサルコペニアを診断するための必須要件ではなく、アウトカム指標として位置づけられています。

ここで重要なのは、

「診断から外れた」=「身体機能は重要ではなくなった」

ではないということです。

3.筋量評価にBMI補正が追加された

筋量評価では、従来から用いられてきた身長の2乗による補正に加えて、BMIで補正した四肢骨格筋量のカットオフ値が新設されました。[1]

これによって、筋量を異なる体格補正から評価できるようになりました。


まず「サルコペニアの可能性がある人」を見つける

サルコペニアの評価では、まずcase finding(ケースファインディング:詳しい評価が必要な人を拾い上げること)を行います。

地域や予防医療では、下腿周囲長、SARC-F、SARC-CalF、指輪っかテストなど、比較的簡便な方法を利用できます。

SARC-Fは、「筋力」「歩く際の補助」「椅子からの立ち上がり」「階段昇降」「転倒」の5項目からサルコペニアの可能性を確認する質問票です。

SARC-CalFは、SARC-Fに下腿周囲長(calf circumference)を組み合わせた方法です。

指輪っかテストは、両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎを囲むことで筋量低下の可能性を簡便に確認する方法です。

ここで重要なのは、

case findingが陽性=サルコペニアの診断

ではないことです。

あくまで、「さらに詳しく評価した方がよい人を見つける」ための段階です。

一方、医療現場では、身体機能の低下や制限、意図しない体重減少、繰り返す転倒、低栄養、心不全・COPD・糖尿病・CKDなどの慢性疾患といった臨床的背景から、評価が必要になることもあります。[2]

つまり、サルコペニアの評価は年齢だけで始めるのではなく、その人の背景や身体状態から「詳しく評価する必要があるか」を考えるところから始まります。

サルコペニア評価におけるcase findingの考え方

AWGS 2025ではどう判定する?

若手臨床家

「At risk」と「Possible sarcopenia」って、何が違うんですか?

ここは混同しやすいですね。危険因子があっても握力が保たれていればAt risk、低握力が確認されればPossible sarcopeniaとして整理します。

AWGS 2025では、case findingなどから評価が必要と判断された場合、まず筋力を評価し、さらに筋量を確認していきます。

大まかな流れは、

危険因子・case finding
↓
握力を評価
↓
At risk for sarcopenia / Possible sarcopenia
↓
DXAまたはBIAで筋量を評価
↓
低筋力+低筋量
↓
Sarcopenia

となります。

AWGS 2025に基づくサルコペニア評価の流れ

At riskとPossible sarcopeniaは違う

At risk for sarcopenia(サルコペニアのリスクあり)は、危険因子などがあるものの、筋力は保たれている状態です。

一方、低握力が確認された場合には、

Possible sarcopenia(サルコペニアの可能性あり)

として、さらに筋量を評価していきます。

Possible sarcopeniaは、「軽いサルコペニア」という意味ではありません。

サルコペニアを早期に捉え、さらに評価・対応していくための段階として理解すると分かりやすいでしょう。

握力の基準値は年齢によって違う

AWGS 2025の低握力のカットオフ値は次の通りです。[2]

年齢男性女性
50~64歳34 kg未満20 kg未満
65歳以上28 kg未満18 kg未満

たとえば握力30kgの男性の場合、60歳なら34kg未満なので低筋力に該当します。

一方、70歳なら28kg未満ではないため、AWGS 2025のカットオフでは低筋力には該当しません。

つまり、同じ握力でも年齢によって判定が異なります。


筋肉量はどう評価する?BIA・DXAと2つの補正方法

若手臨床家

握力が低かったら、次はBIAで筋肉量を測ればいいんですか?

BIAも使えます。ただ、身体組成計に表示された「筋肉量」をそのまま見るわけではありません。AWGS 2025では四肢の筋量を評価します。

低筋力が確認された場合、サルコペニアの確定診断に向けて四肢の筋量を評価します。

AWGS 2025では、DXAまたはBIAが用いられます。

DXAとBIAとは?

DXA(Dual-energy X-ray Absorptiometry:二重エネルギーX線吸収測定法)は、2種類のX線を利用して骨量、脂肪量、除脂肪軟部組織量などを評価する方法です。

一方、

BIA(Bioelectrical Impedance Analysis:生体電気インピーダンス法)

は、身体に微弱な電流を流し、その電気的特性から身体組成を推定する方法です。

BIAは比較的短時間で測定でき、繰り返し評価しやすいという実用上の利点があります。

ただし、BIAによる筋量は推定値であり、体水分状態や測定条件、使用する機器などの影響を受ける可能性があります。

特に浮腫や体液貯留が考えられる患者さんでは、数値だけを見るのではなく、

「どのような身体状態で測定したのか」

まで含めて解釈することが重要です。

ASMとは?

筋量評価で用いられるのが、

ASM(Appendicular Skeletal Muscle Mass:四肢骨格筋量)

です。

これは、両腕と両脚の筋量を合わせた指標です。

AWGS 2025では、ASMを体格に合わせて補正した指標を用います。

ASM/height²

従来から広く使用されてきたのが、

ASM/height²

です。

ASMを身長の2乗で割ることで、身長を考慮して筋量を評価します。

AWGS 2025のカットオフ値は次の通りです。

測定法年齢男性女性
DXA50~64歳<7.2 kg/m²<5.5 kg/m²
DXA65歳以上<7.0 kg/m²<5.4 kg/m²
BIA50~64歳<7.6 kg/m²<5.7 kg/m²
BIA65歳以上<7.0 kg/m²<5.7 kg/m²

DXAとBIAでは、一部のカットオフ値が異なることにも注意が必要です。

AWGS 2025で加わったASM/BMI

AWGS 2025では、身長補正に加えて、

ASM/BMI

によるカットオフ値が新設されました。

BMI(Body Mass Index:体格指数)は、

体重(kg)÷身長(m)²

で求めます。

ASM/BMIでは四肢骨格筋量をBMIで補正することで、体重を含めた体格との関係から筋量を見ることになります。

測定法年齢男性女性
DXA50~64歳<0.80<0.55
DXA65歳以上<0.73<0.52
BIA50~64歳<0.90<0.63
BIA65歳以上<0.83<0.57

以上の筋量カットオフ値はAWGS 2025に基づきます。[1]

なぜBMI補正が追加されたのか?

日本人ではBMIが24kg/m²以上の場合、身長の2乗による補正では低筋量と判定される人がほとんどいないことが、BMI補正導入の背景として説明されています。[2]

身長補正では、

「この身長に対して、どの程度の筋量があるか」

を見ることができます。

一方、BMI補正では、

「体重を含めたこの体格に対して、どの程度の筋量があるか」

という別の視点から筋量を見ることができます。

ただし、

「BMI補正の方が新しいから優れている」

という意味ではありません。

実際、AWGS 2025を日本人2型糖尿病患者754人に適用した2026年の横断研究では、AWGS 2019から2025への変更によってサルコペニア有病率は15.0%から23.6%へ増加し、新たに該当した人には65歳未満またはBMI 23kg/m²以上で、低ASM/BMIに該当する人が多く含まれていました。[3]

これは、AWGS 2025の変更によって従来とは異なる集団が拾い上げられる可能性を示す一例です。

ただし、この研究は日本人2型糖尿病患者を対象とした横断研究です。そのため、この結果だけからBMI補正の優劣や、他の患者集団への有用性まで一般化することはできません。

ASM/height²とASM/BMIの臨床的な意味については、今後も検証が必要です。

したがって現時点では、異なる体格補正によって筋量を見る指標として理解し、どちらか一方を単純に「優れた方法」と考えない方がよいでしょう。


歩行速度が診断基準から外れたなら、測らなくていい?

若手臨床家

AWGS 2025では歩行速度が診断基準から外れたんですよね。だったら、もう測らなくてもいいんですか?

そこは分けて考えた方がいいですね。「診断に使わない」ことと「評価する意味がない」ことは同じではありません。

AWGS 2025では、身体機能はサルコペニアの確定診断要件から外れ、重要なアウトカム指標として位置づけられています。[1]

つまり、

サルコペニアかどうかを判断するための評価

と、

その人が実際にどの程度動けるのかを把握するための評価

は、目的が異なります。

たとえば、

低筋量+低筋力だが、歩行能力は比較的保たれている人

もいれば、

サルコペニアの診断基準には該当しないが、身体機能が低下している人

も考えられます。

診断名だけでは、その人の身体機能をすべて説明することはできません。

身体機能は何で評価する?

身体機能を評価する代表的な方法には、歩行速度、5回椅子立ち上がりテスト(Five Times Chair Stand Test)、SPPBなどがあります。

歩行速度は、一定距離をどの程度の速さで歩けるかを評価します。

5回椅子立ち上がりテストは、椅子から5回立ち上がるまでの時間から、立ち上がり動作を含む下肢身体機能を評価します。

SPPB(Short Physical Performance Battery:簡易身体機能評価バッテリー)は、バランス、歩行、椅子立ち上がりなどから、下肢を中心とした身体機能を総合的に評価する方法です。

AWGS 2025で変わったのは、これらをサルコペニアの確定診断に組み込むかどうかです。

身体機能そのものの臨床的価値がなくなったわけではありません。

サルコペニアの診断と身体機能・運動指導のための評価

診断基準を知ることと、運動指導のための評価は同じではない

若手臨床家

ということは、サルコペニアを診断するための評価と、運動指導のための評価は別なんですね。

そうですね。診断基準を知ったうえで、その人の状態を理解するために何を評価するのかを考えることが大切だと思っています。

サルコペニアの診断では、

低筋量+低筋力

という基準があります。

一方、実際に運動療法や運動指導を考える場合、それだけですべてが分かるわけではありません。

実際の心臓リハビリテーションでは複数の指標を見る

私が関わる心臓リハビリテーションの現場でも、筋量だけを単独で見ているわけではありません。

BIAによる身体組成、握力、歩行速度、5回椅子立ち上がりテスト、SPPBなど、複数の指標を組み合わせながら患者さんの状態を確認します。

それぞれの評価には異なる役割があります。

BIA → 身体組成・筋量
握力 → 筋力
歩行速度 → 移動能力を含む身体機能
5回椅子立ち上がりテスト → 立ち上がり動作を含む下肢身体機能
SPPB → バランス・歩行・椅子立ち上がりを含む身体機能

一つの検査だけで、その人の状態すべてを説明しようとしないことが重要です。

一つの測定結果から原因を決めつけない

たとえば握力は、全身の筋力状態を簡便に捉える指標として広く利用されています。

しかし、

「握力が低い=下肢筋力が低い」

とそのまま置き換えられるわけではありません。

同じように、

「歩行速度が遅い=筋力が弱い」

とも限りません。

歩行能力には筋力だけでなく、バランス、関節機能、神経機能、心肺機能など、さまざまな要素が関係します。

したがって、

測定する → 基準値と比較する → なぜその結果になったのかを考える

ところまで含めて評価することが重要です。

「何を測るか」だけではなく「何のために測るか」

サルコペニアに該当するかを確認するためなのか。

現在の身体機能を把握するためなのか。

運動プログラムを考えるためなのか。

介入後の変化を確認するためなのか。

同じ評価でも、目的によって結果の意味は変わります。

そのため、サルコペニアの評価を、

「基準値を下回った・下回らなかった」

だけで終わらせるのではなく、

その結果が、その人の身体の何を表しているのか

まで考えることが、実際の運動療法・運動指導では重要になります。


まとめ|サルコペニアの「診断」と「身体評価」を分けて考える

AWGS 2025では、サルコペニアの考え方が大きく整理されました。

50~64歳にも診断基準が設定され、サルコペニアの診断は低筋量+低筋力を中心とするものになりました。また、筋量評価には従来の身長補正に加えてBMI補正が導入されました。

評価の入り口では、危険因子やcase findingによって、さらに詳しい評価が必要な人を見つけます。

その後、筋力を評価し、必要に応じてDXAまたはBIAによる筋量評価へ進みます。低筋力と低筋量の両方が確認されれば、AWGS 2025のサルコペニアに該当します。

一方、歩行速度、5回椅子立ち上がりテスト、SPPBなどの身体機能は、確定診断要件から外れ、重要なアウトカムとして位置づけられました。

しかし、

診断基準から外れたことと、評価する必要がなくなったことは同じではありません。

サルコペニアの診断基準は、

「サルコペニアに該当するか」

を判断するためのものです。

一方、実際の運動療法・運動指導では、

筋量、筋力、身体機能をそれぞれ評価し、その人の状態を理解すること

が必要になります。

AWGS 2025の基準値を知ることは重要です。

そのうえで、

「何を測っているのか」
「何のために測っているのか」
「その結果をどう運動指導につなげるのか」

まで考えることが、サルコペニアの評価を実際の現場で活用する第一歩になると考えています。

評価結果を実際の運動指導につなげる考え方については、「知識はあるのに現場で活かせない。その原因と“使える知識”への変換方法」で詳しく解説しています。


参考文献

[1]Chen LK, et al. A focus shift from sarcopenia to muscle health in the Asian Working Group for Sarcopenia 2025 Consensus Update. Nature Aging. 2025;5(11):2164–2175. doi:10.1038/s43587-025-01004-y. 

[2]一般社団法人 日本カヘキシア・サルコペニア学会.

[3]Hashimoto Y, et al. Impact of the AWGS2025 criteria on sarcopenia prevalence and microvascular complications in individuals with type 2 diabetes in Japan: a cross-sectional study. J Diabetes Complications. 2026;40(8):109349. doi:10.1016/j.jdiacomp.2026.109349. 

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この記事を書いた人

安澤 佳樹|Yoshiki Anzawa
医療・スポーツ・教育の領域で、運動と身体機能に関する実践・研究に取り組んでいます。大学病院での心臓リハビリテーションや運動指導、スポーツ現場でのコンディショニングや外傷・障害予防、専門職の教育など、領域を横断して活動しています。研究テーマは、心血管疾患に対する運動療法・身体機能、心臓リハビリテーション、スポーツ外傷・障害など。AZ_ONEでは、「エビデンスを、現場で使える知識に変換する」をテーマに、研究と実践をつなぐ情報を発信しています。

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