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心臓リハビリではどんな運動をする?有酸素運動・筋トレと運動強度をわかりやすく解説

「心臓リハビリでは、どんな運動をするの?」

「心臓の病気があるのに、運動しても大丈夫?」

「ウォーキングだけでいい?筋トレもしていいの?」

心筋梗塞や心不全などの心臓病と診断され、「心臓リハビリをしましょう」と言われても、実際に何をするのかイメージできない方もいるのではないでしょうか。

心臓リハビリでは、ウォーキングや自転車運動などの有酸素運動が中心となりますが、それだけではありません。患者さんの状態に応じて、筋力トレーニングなども組み合わせて行います。

そして大切なのは、単に「どの運動をするか」だけではありません。

同じ心臓病でも、病気の状態や体力、筋力、血圧、運動したときの身体の反応などは一人ひとり異なります。

そのため、その人の状態を確認し、どのような運動を、どのくらいの強さで行うのかを考えることが重要です。

この記事では、心臓リハビリでは実際にどのような運動を行うのか、筋力トレーニングも行ってよいのか、運動の強さをどのように決めるのかについて、国内外のガイドラインや近年の研究をもとにわかりやすく解説します。


目次

心臓リハビリは「運動するだけ」ではない

「心臓リハビリ」と聞くと、病院でウォーキングや自転車運動をする姿をイメージするかもしれません。

しかし、心臓リハビリテーションは、運動だけを行うものではありません。

心臓病の再発や悪化を予防し、より良い生活を送ることを目指して、運動だけでなく、病気について学ぶこと、生活習慣や食事を見直すこと、心理面のサポートなどを組み合わせて行います。

つまり、心臓リハビリは、心臓病のある方の生活を幅広く支える取り組みと考えるとわかりやすいでしょう。

日本では、日本循環器学会と日本心臓リハビリテーション学会が、こうした心臓リハビリの考え方をガイドラインとしてまとめています。心臓リハビリをどのように進めるのか、どのような運動を行うのかを考えるうえで、国内の重要な指針となっています。[1]

さらに2026年には、欧州心臓病学会(ESC:European Society of Cardiology)から、新しい心臓リハビリのガイドラインが発表されました。

これはESCとして初めて心臓リハビリに特化してまとめられたガイドラインです。運動だけを見るのではなく、身体の状態や生活、その人自身の目標や希望まで含めて考えることが重視されています。[2]

こうした国内外のガイドラインを見ても、心臓リハビリは単に「心臓病の人に運動をしてもらうこと」ではありません。

その幅広い取り組みの中で、重要な役割を担っているのが運動です。

では、実際にはどのような運動を行うのでしょうか。


心臓リハビリではどんな運動をする?

心臓リハビリで行う運動は、ウォーキングだけではありません。

代表的なものには、

  • ウォーキングや自転車運動などの有酸素運動
  • マシンやダンベル、ゴムバンド、自分の体重などを利用した筋力トレーニング
  • 身体をゆっくり伸ばすストレッチ

などがあります。

一般的には、ウォームアップを行ったあとに有酸素運動や筋力トレーニングなどを行い、最後にクールダウンを行います。

こうした運動は、日本の心臓リハビリのガイドラインでも基本的な運動として示されています。[1]

ただし、すべての人が同じメニューを行うわけではありません。

その人の状態に合わせて、必要な運動を組み合わせていきます。

若手臨床家

心臓リハビリでは、実際にはどんな運動をすることが多いんですか?

ウォーキングや自転車運動などの有酸素運動が中心になりますが、それだけではありません。状態に応じて、筋力トレーニングやストレッチなども組み合わせます。
大切なのは、「心臓リハビリではこの運動をする」と最初から決めるのではなく、その人の状態を確認して、必要な運動を考えることです。

心臓リハビリで行う有酸素運動・筋力トレーニング・ストレッチと個別化の考え方

では、それぞれの運動についてもう少し詳しく見ていきましょう。

まずは、心臓リハビリの中心となる有酸素運動から説明します。


有酸素運動|ウォーキングや自転車運動

心臓リハビリの中心となる運動の一つが有酸素運動です。

代表的なのは、ウォーキング、トレッドミル、自転車エルゴメータなどです。

有酸素運動は、大きな筋肉を使いながら、ある程度の時間、繰り返し身体を動かす運動です。日本のガイドラインでも、心臓リハビリにおける基本的な運動として位置づけられています。[1]

ただし、ここで注意したいのが、

「心臓リハビリでは、決まった時間を歩けばいい」

と単純に考えないことです。

たとえば、運動を始めたばかりの方や体力が低下している方では、短い時間や軽い運動から始める場合もあります。

身体の状態を確認しながら、少しずつ運動時間や強さを調整していくことが大切です。

つまり、

「何分歩けばいいのか」
「どのくらい速く歩けばいいのか」

は、すべての人に共通するものではありません。

では、自分に合った運動の強さは、どのように決めるのでしょうか。

その方法については⑥で詳しく説明します。


心臓リハビリでは筋力トレーニングも行う

「心臓の病気があるのに、筋トレをしても大丈夫なの?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、身体の状態を確認したうえで行う筋力トレーニングも、心臓リハビリで行われる重要な運動の一つです。

専門的には、筋肉に抵抗をかけて行う運動をレジスタンストレーニングと呼びます。

トレーニングマシンやダンベルだけでなく、ゴムバンドを引っ張る運動や、自分の体重を利用した運動なども含まれます。

日本のガイドラインでも、筋力が低下している方やフレイルのある方では、低い強度から筋力トレーニングを行うことが推奨されています。[1]

また、2026年には、冠動脈性心疾患の患者さんを対象とした複数の研究をまとめて検討した報告も発表されています。

その研究では、有酸素運動に筋力トレーニングを組み合わせることで、運動能力や筋力、生活の質などの改善が報告されました。[3]

ただし、この結果をすべての心臓病の方にそのまま当てはめることはできません。研究によって運動内容は異なり、結果の確実性にもばらつきがあります。

若手臨床家

心臓病のある方でも、筋力トレーニングは行うんですか?

はい。状態に応じて筋力トレーニングも行います。
ただし、全員が同じ運動や負荷で行うわけではありません。病気の状態や体力、筋力などを確認して、「この人には何が必要で、どのくらいならできるのか」を考えていきます。

そのため、

「心臓病でも筋トレをした方がいい」

と一律に考えるのではなく、身体の状態を確認したうえで、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

特に心臓病の治療後や運動を始める段階では、自己判断で強い負荷をかけるのではなく、医師や心臓リハビリの専門スタッフと相談しながら進めることが大切です。


心臓リハビリにはどんな効果がある?

では、こうした運動を中心とした心臓リハビリには、どのような効果が期待できるのでしょうか。

ここで紹介したいのが、CaReMATCH(ケアマッチ)という研究です。

この研究が興味深いのは、単に「心臓リハビリには効果があるのか」を調べたことではありません。

心臓病の治療は、この数十年で大きく進歩しています。

そこで、

「現在のように心臓病の治療が進歩した時代でも、運動を中心とした心臓リハビリを行う意味はあるのか?」

という疑問が出てきます。

CaReMATCHは、この疑問を検討した近年の研究です。

2010年以降に発表された研究を対象に、4,975人の患者さんのデータをまとめて、現在の治療環境における心臓リハビリの効果を検討しました。

その結果、心臓リハビリに参加した人では、参加しなかった人と比較して、すべての原因による入院や心血管疾患による入院のリスクが低く、12か月までの健康に関連した生活の質も良好だったことが報告されています。

一方で、すべての原因による死亡や心血管疾患による死亡については、明確な差は確認されませんでした。[4]

ここで大切なのは、

「心臓リハビリをすれば、すべての心臓病で同じ効果が得られる」

という意味ではないことです。

この研究の対象は冠動脈性心疾患の患者さんで、解析対象となった患者さんの多くは心筋梗塞後でした。

そのため、心不全や弁膜症など、ほかの心臓病にも同じ結果が当てはまるとは限りません。

それでも、現在のように心臓病の治療が進歩した環境においても、運動を中心とした心臓リハビリが入院や生活の質に良い影響をもたらす可能性が示されたことは、この研究の重要なポイントです。


心臓リハビリの運動強度はどうやって決める?

「ウォーキングをするのはわかったけれど、どのくらいの速さで歩けばいい?」

「筋トレは、どのくらいの負荷なら大丈夫?」

心臓リハビリを始めるときには、こうした疑問も出てきます。

結論からいうと、

心臓リハビリの運動強度は、すべての人に同じ数値を当てはめて決めるものではありません。

まずは、その人の状態を確認する

2026年のESCガイドラインでも、運動を始める前に、その人の状態を評価することが重視されています。

体力や筋力だけでなく、心臓の状態や運動したときの身体の反応なども確認しながら、その人に合った運動を考えていきます。[2]

つまり、最初から、

「まずは○分歩きましょう」

と決めるのではありません。

まず、

「今、この人はどのくらい運動できるのか」

を確認することが出発点になります。

CPETは運動の強さを考えるための検査の一つ

そのために用いられる重要な検査の一つが、心肺運動負荷試験(CPET:cardiopulmonary exercise testing)です。

CPETでは、自転車やトレッドミルを使って少しずつ運動の負荷を上げながら、呼吸、酸素の取り込み、心拍数など身体の反応を調べます。

難しく考える必要はありません。

簡単にいえば、

「どのくらい運動できるのか」
「運動すると身体がどう反応するのか」

を詳しく確認する検査です。

こうした情報は、その人に合った運動の強さを考えるときに役立ちます。ESC 2026でも、CPETは運動能力などを評価し、運動内容を考えるための重要な方法として位置づけられています。[2]

ただし、心臓リハビリを行うすべての人がCPETを受けるわけではありません。

患者さんの状態などに応じて、ほかの方法も使いながら運動の強さを考えます。

心拍数だけを見るわけでもない

心拍数も大切な情報ですが、

「心拍数が○○なら大丈夫」

と、それだけで判断するわけではありません。

心臓病の種類や薬の影響などによって、運動したときの心拍数の変化は人によって異なるからです。

そのため、心臓リハビリでは、心拍数や血圧、症状などに加えて、本人がどのくらい「きつい」と感じているのかも確認します。

この「自分がどのくらいきついと感じているか」を数値で表す方法を、自覚的運動強度(RPE:Rating of Perceived Exertion)といいます。

つまり、

検査の数値だけを見るのではなく、実際に運動したときの身体の反応や本人の感覚も含めて考える。

これが心臓リハビリで運動の強さを決めるうえで大切な考え方です。[1,2]

そして、一度決めたら終わりでもありません。

運動を続けて体力がつけば、以前と同じ運動でも身体への負担は変わってきます。

そのため、

評価する → 運動する → もう一度評価する → 必要に応じて調整する

という流れで考えていきます。

心臓リハビリ中に運動を中止・調整する目安については、「心臓リハビリの運動中止基準とは?血圧・心拍数・症状から安全管理を考える」で詳しく解説しています。


心臓リハビリで大切なのは「その人がどうなりたいか」

ここまで、心臓リハビリで行う運動や、その強さをどのように決めるのかについて説明してきました。

しかし、実際に心臓リハビリの現場で患者さんと関わっていると、私は「適切な運動を決めること」だけでは十分ではないと感じています。

大切なのは、

「この人は、これからどうなりたいのか」

を考えることです。

たとえば、

「もう一度旅行に行きたい」

「以前のように買い物に行けるようになりたい」

「体力をつけて健康に過ごしたい」

など、運動する目的は一人ひとり違います。

運動の必要性を理解して、自分から取り組みたいと思っている方もいれば、「なぜ自分に運動が必要なのか」をまだ実感できていない方もいます。

だからこそ、専門職が一方的に、

「この運動をしてください」

と伝えるだけではなく、

その人が大切にしていることや目標を知り、そこに運動がどう役立つのかを一緒に考えること

が重要だと私は考えています。

これは、ガイドラインが示している考え方とも重なります。

日本のガイドラインでは、運動を考えるときに、その人の仕事や趣味、生活環境、本人の希望なども考慮することが示されています。

ESC 2026でも、身体の状態だけでなく、患者さん自身の希望や目標を考えながら心臓リハビリを個別化することが重視されています。[1,2]

私は、こうした考え方を実際の現場では、

「この人は、これからどうなりたいのか」

を考えることだと捉えています。

「心臓病だから運動しない」ではなく、できる運動を考える

心臓病があると、

「運動したら心臓に負担がかかるのではないか」

「何か起きたら怖いから、あまり動かない方がいいのではないか」

と不安になる方もいます。

もちろん、安全性への配慮は欠かせません。

病気の状態によっては運動を控える必要がありますし、運動中の症状や血圧、心拍数などを確認することも重要です。

一方で、

「心臓病がある」という理由だけで、必要以上に運動を避けることが適切とは限りません。

大切なのは、運動を「する・しない」だけで考えるのではなく、

その人の状態を確認したうえで、「今、この人には何ができるのか」を考えること

だと思います。

CPETや心拍数、血圧、RPEなどの評価も、患者さんを運動から遠ざけるためのものではありません。

私はむしろ、安全にできる運動を見つけるための情報として活用することが重要だと考えています。

そのためには、運動を指導する側にも、心臓病や運動したときの身体の反応、安全管理についての知識が必要です。

運動の先にある「生活」を考える

心臓リハビリでは、体力や筋力がどのくらい改善したのかを確認することも大切です。

ただし、数値を良くすることだけが最終的な目的ではありません。

体力がついたことで、外出できるようになった。

階段を上ることへの不安が減った。

仕事や趣味に戻ることができた。

こうした日常生活の変化につなげていくことも、心臓リハビリの大切な意味の一つだと思います。

だから私は、

評価する → 運動を考える → 実践する → 再評価する

という流れの中心に、

「この人はどうなりたいのか」

という本人の目標を置くことが大切だと考えています。


まとめ|大切なのは「何をするか」だけではない

心臓リハビリで行う運動は、ウォーキングだけではありません。

ウォーキングや自転車運動などの有酸素運動を中心に、その人の状態に応じて筋力トレーニングなども組み合わせていきます。

そして大切なのは、「どんな運動をするのか」だけではありません。

その人の状態を確認し、安全性に配慮しながら、運動の種類や強さを考える。そして、実際に運動したあとの変化を確認し、必要に応じて内容を調整していきます。

さらに、その先にある、

「本人がどうなりたいのか」

という目標も大切です。

心臓病があるから運動を避けるのでもなく、誰もが同じ運動をすればよいのでもありません。

評価し、その人にできる運動を考え、実践し、もう一度評価する。

その積み重ねを、本人が望む生活につなげていく。

これが、心臓リハビリで運動を考えるうえで大切なことだと私は考えています。


参考文献

[1]Makita S, Yasu T, Akashi YJ, et al. JCS/JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients With Cardiovascular Disease. Circulation Journal. 2023;87(1):155–235. doi:10.1253/circj.CJ-22-0234. 

[2]Bäck M, Wilhelm M, et al. 2026 ESC Guidelines on cardiac rehabilitation: Developed by the task force on cardiac rehabilitation of the European Society of Cardiology (ESC). European Heart Journal. Published online August 28, 2026. doi:10.1093/eurheartj/ehag099. 

[3]Gois CO, et al. Effect of Combined Aerobic and Resistance Training on Exercise Capacity, Muscle Strength, Quality of Life, and Mortality in Patients with Coronary Heart Disease: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Medicine – Open. 2026;12:112. doi:10.1186/s40798-026-01080-3. 

[4]CaReMATCH Collaborators. Exercise-based cardiac rehabilitation for coronary heart disease: the CaReMATCH individual participant data meta-analysis. European Journal of Preventive Cardiology. 2026;33(6):841–853. doi:10.1093/eurjpc/zwaf629. Published online October 12, 2025. 

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この記事を書いた人

安澤 佳樹|Yoshiki Anzawa
医療・スポーツ・教育の領域で、運動と身体機能に関する実践・研究に取り組んでいます。大学病院での心臓リハビリテーションや運動指導、スポーツ現場でのコンディショニングや外傷・障害予防、専門職の教育など、領域を横断して活動しています。研究テーマは、心血管疾患に対する運動療法・身体機能、心臓リハビリテーション、スポーツ外傷・障害など。AZ_ONEでは、「エビデンスを、現場で使える知識に変換する」をテーマに、研究と実践をつなぐ情報を発信しています。

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