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心肺運動負荷試験(CPX)とは?何がわかる?心臓リハビリでの活用をわかりやすく解説

心臓リハビリでは、その人の体力や病気の状態に合わせて運動することが重要です。

しかし、「どのくらいの強さで運動すればよいのか」「運動したときに心臓や身体がどのように反応するのか」は、安静にしているときの検査だけでは十分にわからないことがあります。

そこで行われる検査の一つが、心肺運動負荷試験(CPX)です。

CPXでは、運動中の呼吸や心拍数、血圧、心電図などを測定することで、運動耐容能(その人がどの程度まで運動できるかという身体能力)や、運動に対する身体の反応を評価します。

さらに、CPXから得られた情報は、心臓リハビリで「どのくらいの強さで運動するのか」を考えるためにも利用されます。JCS/JACR 2021では、CPXは運動制限の原因の評価、peak VO₂による予後評価、運動処方の作成などに用いる検査として位置づけられています。[1]

この記事では、CPXとはどのような検査なのか、何がわかるのか、そして得られた結果を心臓リハビリでどのように活用するのかを解説します。


目次

心肺運動負荷試験(CPX)とは?

CPXは、自転車エルゴメータやトレッドミルなどを使って徐々に運動負荷を上げながら、運動に対して身体がどのように反応するのかを調べる検査です。

なお、海外のガイドラインや論文では、CPET(cardiopulmonary exercise testing)と表記されることがあります。本記事では、日本の臨床でよく用いられる「CPX」に統一します。

検査中はマスクを装着し、呼吸によって取り込まれる酸素の量や、排出される二酸化炭素の量などを測定します。さらに、心拍数や血圧、心電図、運動中の症状なども確認します。

若手臨床家

CPXって、簡単にいうと体力測定なんですか?

運動耐容能を評価することは大切な目的の一つです。ただ、それだけではありません。運動したときの身体の反応や、運動を制限している要因、その後の運動処方を考えるための情報も得られます。

つまりCPXは、単に「どのくらい運動できたか」を測るだけの検査ではありません。

実際に運動したときに、心臓・肺・血管・骨格筋などを含めた全身がどのように反応するのかを評価できることが大きな特徴です。


CPXでは何がわかる?

CPXでは非常に多くの指標を測定します。

すべてを一度に覚える必要はありません。まずは心臓リハビリと関係の深い、peak VO₂、AT、心拍数、血圧、心電図、症状などから理解するとよいでしょう。

peak VO₂|運動耐容能を評価する代表的な指標

peak VO₂は、運動負荷を徐々に上げていったときに得られる最も高い酸素摂取量です。

私たちが運動するときには、肺から取り込んだ酸素を血液によって全身へ運び、骨格筋で利用します。その過程には、心臓、肺、血管、骨格筋などさまざまな機能が関係しています。

そのためpeak VO₂は、運動耐容能を客観的に評価する代表的な指標として用いられます。

また、心血管疾患では単に体力を見るだけでなく、予後評価にも利用されます。

AT|運動強度を考える重要なポイント

心臓リハビリの運動処方を考える際によく使われるのが、AT(anaerobic threshold:嫌気性代謝閾値)です。

運動強度を徐々に上げていくと、身体のエネルギー代謝や呼吸の反応が変化するポイントがあります。CPXでは呼気ガスの変化からこのポイントを評価し、運動強度を考えるための目安として利用します。

JCS/JACR 2021では、日本ではCPXによって求めたATを利用した運動処方が広く行われているとされています。[1]

若手臨床家

ATが運動処方に使われるのは知っています。でも、なぜATを確認することが大切なんですか?

年齢などから一律に運動強度を決めるのではなく、実際にその人が運動したときの反応をもとに強度を考えられることが大きいと思います。

同じ割合のpeak VO₂や最高心拍数を使って運動強度を設定しても、実際の身体の反応には個人差があります。

2026 ESCガイドラインでは、持久性運動の強度を設定する際に、peak値に対する一定割合だけでなく、換気性作業閾値を利用して個別化する考え方が示されています。[2]

心拍数・血圧・心電図・症状|運動中の反応も確認する

CPXでは、peak VO₂やATだけを見ているわけではありません。

運動負荷が徐々に上がるなかで、心拍数や血圧がどのように変化するのか、心電図に異常な変化がないか、どのような症状が出現するのかなども確認します。

自転車エルゴメータを使用する場合には、ワット(W)も重要な情報になります。

ワットは、簡単にいえば自転車をどのくらいの負荷で漕いでいるかを表す値です。専門的には仕事率(power output)を表しますが、心臓リハビリの現場では「○Wで運動する」と表現することが多いため、本記事でも以降は「ワット」と表記します。

つまり、「何Wまで漕げたか」「peak VO₂はいくつだったか」といった一つの数値だけを見る検査ではありません。

複数の情報を組み合わせながら、その人が運動したときの反応を評価していきます。


なぜ心臓リハビリでCPXを行うの?

CPXでは多くの数値が得られますが、数値を測定すること自体が目的ではありません。

心臓リハビリでは、得られた情報をその後の運動療法につなげることが重要です。

例えば、

運動耐容能を評価する
↓
運動中の心拍数・血圧・症状などの反応を確認する
↓
運動を制限している要因を考える
↓
その人に適した運動強度や運動方法を検討する

という流れにつなげることができます。

2026 ESCガイドラインでも、CPXは全身的な身体機能や運動を制限する要因、心拍応答などを評価し、個別の運動処方につなげるために用いられています。[2]


CPXの結果を心臓リハビリでどう使う?

CPXを実施したら、その結果を実際の運動へつなげていきます。

CPXとは何かを示した心肺運動負荷試験から運動処方・再評価までの流れ

という流れです。

心臓リハビリで実際にどのような運動を行うのかについては、「心臓リハビリではどんな運動をする?有酸素運動・筋トレと運動強度をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。


CPXの数値だけで運動強度を決めればいい?

若手臨床家

CPXでATがわかれば、その数値に合わせて運動すればいいんですか?

CPXの結果は重要ですが、僕は数値だけで運動強度を固定するのではなく、実際に運動したときの反応も確認しています。

ここからは、僕自身の心臓リハビリの現場での経験です。

僕はCPXで得られたAT時の心拍数やワットを参考にしながら、実際の運動強度を考えています。

ただ、CPXで得られた数値と、実際に運動したときの患者さんの反応が必ずしも一致するとは限りません。

例えば、AT時の心拍数付近まで達しているにもかかわらず、患者さん本人はまだかなり余裕があり、RPEが9〜11程度というケースがあります。

RPE(自覚的運動強度)とは、運動を「どのくらいきつい」と感じているかを本人に評価してもらう指標です。

心臓リハビリでよく使われるBorgスケールでは6〜20で表し、9は「かなり楽」、11は「楽」、13は「ややきつい」程度が目安になります。

客観的な評価だけでなく、RPEなどを用いて患者さん自身が感じる運動のきつさを確認し、個々の反応に合わせて強度を調整することも重要です。[2]

そのため、AT時の心拍数付近に達していてもRPEが9〜11程度であれば、少なくとも患者さん自身が感じている運動のきつさにはまだ余裕があることになります。

反対に、ワットがAT時の値に達していても、心拍数にはまだ余裕があることもあります。

こうした場合、僕の現場ではAT時の心拍数やワットだけで判断するのではなく、RPE、症状、その日の体調、内服状況なども確認しながら運動強度を調整しています。

患者さんの体力や反応によっては、ワットを1〜2 W程度と細かく調整することもあれば、5 W程度ずつ調整することもあります。

もちろん、これは「1〜5 Wずつ上げればよい」という一般的なルールではありません。あくまで僕自身の臨床で、患者さんの反応を確認しながら行っている調整の一例です。

CPXで得られた数値をそのまま運動処方へ置き換えるのではなく、実際に運動したときの反応と合わせて解釈する。

僕はこの点を大切にしています。


患者さんの状態が変われば、運動処方を見直すこともある

一度CPXを行って運動強度を設定しても、その後ずっと同じ運動強度を続けるとは限りません。

心臓リハビリによって体力が向上することもあれば、病態や治療内容、内服薬などが変化することもあります。

僕の臨床現場でも、診療開始時だけでなく、心臓リハビリ開始後の節目や、その後の経年的な評価としてCPXを行うことがあります。

また、決められた時期だけではなく、治療内容の変化をきっかけに再評価することもあります。

実際に、CPXを行ったあとにβ遮断薬が追加された患者さんで、医師と相談し、再度CPXを行って運動強度を検討したことがあります。

β遮断薬は、心臓に作用して心拍数の上昇を抑える働きがある薬です。そのため、服用を開始したり薬の量が変わったりすると、同じ運動をしても以前とは心拍数の反応が変わることがあります。

このような場合、以前のCPXで得られた心拍数をそのまま運動強度の目安として使えるとは限りません。

JCS/JACR 2021でも、β遮断薬を使用している患者などでは、CPXによって実際の運動時の代謝や換気応答を評価したうえで運動処方を考える方法が示されています。[1]

大切なのは、CPXで一度決めた数値を固定するのではなく、患者さんの状態や治療、体力の変化に合わせて運動処方を見直していくことです。

自宅で心臓リハビリを続ける際の運動方法や再評価については、「心臓リハビリは自宅でもできる?運動の方法と安全に続けるポイントを解説」で紹介しています。


CPXを行う前・検査中の安全管理も重要

CPXでは運動負荷を徐々に上げていくため、検査前には運動負荷をかけてもよい状態なのかを確認し、検査中には症状、心電図、心拍数、血圧などの変化を確認します。

ただし、CPXの禁忌や中止基準と、通常の心臓リハビリで行う運動療法の禁忌・中止基準は、すべて同じではありません。

そのため、この記事では詳細な基準までは扱いません。

心臓リハビリで運動を開始する前の禁忌については、「心臓リハビリの禁忌とは?絶対的禁忌・相対的禁忌と運動療法の注意点」で詳しく解説しています。

また、運動中の血圧・心拍数・症状などから中止を判断する考え方については、「心臓リハビリの運動中止基準とは?血圧・心拍数・症状から安全管理を考える」を参考にしてください。


まとめ|CPXは「測って終わり」の検査ではない

CPXでは、peak VO₂やATだけでなく、運動中の心拍数、血圧、心電図、症状など、さまざまな情報を得ることができます。

しかし、大切なのは数値を測定すること自体ではありません。

CPXで評価する
↓
得られた結果を解釈する
↓
その人に合った運動を考える
↓
実際に運動する
↓
運動中の反応や体力の変化を確認する
↓
必要に応じて運動処方を見直す

という流れにつなげることが重要です。

CPXで得られたAT時の心拍数やワットは、運動強度を考えるための重要な情報です。

一方、実際の心臓リハビリでは、CPXの数値だけではなく、RPEや症状、その日の状態、治療内容なども含めて考える必要があります。

数値をそのまま運動へ置き換えるのではなく、得られた情報を患者さんの状態と合わせて解釈し、その人に合った運動につなげていく。

CPXは、そのための重要な評価方法の一つです。


参考文献

[1]Makita S, Yasu T, Akashi YJ, et al. JCS/JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients With Cardiovascular Disease. Circulation Journal. 2023;87(1):155–235. doi:10.1253/circj.CJ-22-0234.

[2]Bäck M, Wilhelm M, et al. 2026 ESC Guidelines on cardiac rehabilitation. European Heart Journal. Published online August 28, 2026. doi:10.1093/eurheartj/ehag099.

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この記事を書いた人

安澤 佳樹|Yoshiki Anzawa
医療・スポーツ・教育の領域で、運動と身体機能に関する実践・研究に取り組んでいます。大学病院での心臓リハビリテーションや運動指導、スポーツ現場でのコンディショニングや外傷・障害予防、専門職の教育など、領域を横断して活動しています。研究テーマは、心血管疾患に対する運動療法・身体機能、心臓リハビリテーション、スポーツ外傷・障害など。AZ_ONEでは、「エビデンスを、現場で使える知識に変換する」をテーマに、研究と実践をつなぐ情報を発信しています。

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